リーディング(reading)は視覚情報処理の中でも、高度な認知過程であるが、その基礎的認知過程はよく分っていない。特に初期の視覚情報処理過程についての研究はまだまだ未知の事がらが多く残されている。中でもリーディングに要する有効視野範囲(effective visual field size)が読みの周辺探索においてどのような役割を担っているのかについては不明である。今回の実験の目的はリーディング中に周辺視(特に近中心窩情報)が果している探索的役割を明らかにすることにある。リーディングに要する有効視野の広さは意外に狭く、英語で30字、日本語では(漢字の寄与のため)さらに7文字程度と狭くなる。個々のテキスト成分の準同時並列型の視覚探索(visual search)であると考え、それはサッケード運動と疑視時間を吟味すれば明らかにできると考えた。テキスト成分は中心視の決定領域で分析される前に、周辺プレビュー領域において周辺視探索をうけると考え、さらに成分の空間周波数分析がなされると考えられる。漢字かな混じり文で周辺探索させたテキストの読みの実験の結果、視覚探索の条件下ではふつうの読みとは異なる視覚処理システムがはたらくことが示唆された。これは、リーディングと視覚探索は異なる処理であることを示唆すると共に、周辺視探索も両課距ではちがう機能(プレビュー機能)を有することを示しているといえる。
|