80年代以降のアメリカにおいてSBM(School-Based Management)は教育改革の一大主題となっており、全米各地で多様に構想され実験されている。SBMは3つに類型化されうるが、第一の類型はSSB(School Site Budgeting)と呼ばれ、第2のそれは学校の共同決定(shared decision making)を重視し、親の学校参加を強調する類型とみなせる。そして第3の類型が、教員などの専門職自治を中核とするSBMの類型である。なかでも第3の類型は、80年代後半以降-いわゆる「第2の波」-において改革理念として前面に出されている教員の専門職主義を具体化する形態でもあり、SBMの主流となっている。 本年度は、こうした類型化を前提に第3類型の事例分析に焦点をあわせることにして、その代表的存在としてアメリカでも注目されているフロリダ州デード郡のSBM/SDM(School Based Management/Shared Decision Making)の実験を分析した。この成果は、「学校の再生と教員参加型のSBM」というタイトルで論文とした(平原春好編『学校参加と権利保障』出樹出版、93年刊行予定)。 その内容を要約すれば、デード郡のSBM実験はSDM(共同決定)という名称のとおり、校長や教員をはじめとして、親と住民、それに生徒さえ学校管理の主体に含まれており、これらが協議会を構成する形態をもつ。しかしこの実験の重点は、教員の人事や評価、教育内容と生徒管理という領域の意志決定において、教員達が協同することを促すことにある。つまり、それまでの校長による学校自治から教員集団の自治への転換を実験の実質としている。こうして、学校が校長中心の官僚的な組織文化を持つものから、教員相互の自律的で協同的な組織文化を持つものに革新されつつある。この組織文化の革新が学校を再生させる内在的な力であり、ここに教員参加型のSBMの存在意義がある。
|