研究概要 |
1.第1年度は、資料の収集につとめる一方でアンティフォンの弁論の翻訳に従事して本邦初の翻訳を仕上げた。これによってアーケイック期の特に宗教的観念を理解するための手がかりを獲得した。 2.ついでM.Stahl,Aristokraten and Tyrannen im archaischen Athen,Stuttgart,1987の第1部を読むことで、アーケイック期の史料を考える際oralityということを念頭に置かねばならないことを認識した。 3.第1年度の終わりから第2年度の初めにかけて、orality関係の資料収集に努め、その中でR.Thomas,Oral Tradition and Written Recordin Classical Athens,Cambridge,1989を読むことで、oralityとliteracyとの複雑な関わり合いの探求が今後のギリシア史研究に大きな意味を持つことを認識した。 4.上記Thomasの著に教えられてoral trraditionを考える上で重要な史料となるアンドキデスの翻訳に取り組み、本邦初の翻訳を仕上げた。これによりoral traditionの変わり易さを認識するともに、当該時代における「口承社会」の根深さを認識した。 5.ついでギリシアにおけるoralityの問題を考える上での原点となるホメロス研究に着手し、資料の収集に努めるとともに読解作業にとりかかった。 6.orlityの問題を念頭に、膨大な蓄積のあるホメロス研究の大筋の流れを理解すべくJ.Latacz編集の2著(Homer,Darmstadt,1979;1991)やM.Parryの論文などを読んで、この問題が実に様々な問題と絡まっていることを認識した。 7.上記5,6の作業は現在も継続中であり、これをなるべく早く仕上げ、抒情詩や哲学の断片の解釈に戻ることが今後の課題である。
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