研究概要 |
K中間子放崩の精密測定を通して、自然界の時空反転CP,CPT対称性の破れを検出し、その機構解明をめざす。具体的には,500MeV×500MeV e^+e^-衝突型加速器施設であるφファクトリーを建設し,実験を行うことである。本研究では,そのための実用的検出器システムの具体案を検討した。 システムは,tracking chamberとfine-sampling type shower counterの二つの主要素のみから成り,非常にシンプルである上に,各々に荷する性能要求も容易に実現出来る。例えば,荷電粒子に対してはΔP/P(〕 SY.simeq. 〔)3%;光子に対してはσ/E(〕 SY.simeq. 〔)9%/√<E>,入射位置精度=1〜2mmである。特長は,shower counterを光子検出器としてのみでなく,荷電粒子識別のためにrange counterとしても利用する。π/μ/eの分離は各々1%程度の他粒子混入率で行える。 また,φファクトリー特有の運動学的制約を大いに活用する。つまり,バックグラウンドの除去と共に,放崩K粒子の種類を確定するのにtagging法に用いる。検出器性能の精度高い較正並びにバックグラウンド事象の差し引きに,多くの事象の中から必要とする種類の粒子を純度高く抽出するのに活用する。これらの手法を提案した。 上記の方法とシステムにより,最も測定が困難視されていたK→ππでのdirect CP violationも,ΔRe(ε′/ε)=±1×10^<-4>の統計・系統誤差(従来の固定標的実験よりも1桁向上した精度)で,測定可能と結論する。同時に,荷電K中間子でのCP対称性の破れを始めとして,大変興味多い反応過程を本システムで検出・研究出来ることを指摘した。
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