研究概要 |
非線形光学現象である第二高調波の強度変化(SHG強度変化)を利用したオプティカル化学センサー開発の基礎検討として、2-amino-9-fluorenone 1,4-hydroxy-2′-nitrobiphenyl 2,2-chloro-4-nitro-N-methylaniline 3,4-dodecylaniline 4,4-octadecylpyridine 5,4,4′-dioctadecyl-2,2′-bipyridyl 6,2-(N-octadecylamino)-naphthalene-6-sulfonic acid 7を感応素子とし,YAGレーザー(1064nm,パルス幅10ns)を光源として,pHの異なる種々の試料溶液に対するSHG強度変化を測定した.使用した感応分子はいずれも試料溶液pHの変化により分子内プロトン化,脱プロトン化が起き,そのため分子内分極率が変化し,結果としてSHG強度が変わることが予想される.まず,SHG材料として知られている1,2,3の微結晶を多孔質セラミクス板に吸着させ,これを試料溶液に浸し,レーザー光を照射した結果,1,3に基づくものは強いSHGが見られたが,試料溶液pHに依存したSHG強度変化は観察されなかった.これは,試料溶液と接している微結晶の界面でのSHG強度変化よりも,分子内分極率が変化しない微結晶バルクでのSHGの寄与の方が大きいためであると考えられる.そこで,SHG発生の界面での寄与を大きくするために,両親媒性分子である4〜7を1,2-dichloromethaneに溶解し,有機層ー試料水溶液界面でのSHGの観測を試みた結果,最も分子内分極率の大きい7に基づく界面がSHG活性を示し,その強度は試料溶液pHがアルカリ性になるにつれ増大した.これは,7のアミノプロトンがアルカリ域で解離し,分子内分極率が増大するためと説明できる.また,K^+と選択的に錯体を形成することが知られているbis(benzo-15-crown-5)を有機溶媒に溶解し,K^+を含む試料溶液界面でのSHG強度を測定した結果,K^+濃度の増加とともにSHG強度が増加する現象が見出された.
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