研究概要 |
亜硝酸と溶存酸素の反応で硝酸を生成する反応が,凍結を行うことにより異常に進むことを見いだし,凍結による反応の促進効果および環境中における凍結過程の役割について研究を行った。凍結を行うと,氷結晶による反応物質の排除とその際に生じる電荷分離によって生じる静電気的な効果により反応物質が界面への吸着され,そして,氷結晶成長に伴う反応物質の高濃縮が起こって反応が促進されると考えると矛盾のないことがわかった。環境中における凍結過程による硝酸の生成,雨の酸性化についての研究では,自然界でも凍結が起これば反応が促進され亜硝酸から硝酸の生成が起こることがわかった。しかし,雨の中の亜硝酸イオン濃度は非常に低く,雨のpHに影響を及ぼすことはないことがわかった。霧については,大阪府と奈良県の境にある生駒山において得られた結果の中でpH3.1程度の時にも非常に高濃度の亜硝酸が検出され,この霧が凍結した場合,pHが0.1以上低下することもわかった。環境中で雨あるいは雲や霧が凍結する過程は,珍しいことではなく,そのことから考えても,硝酸イオンの生成経路として凍結が重要な役割を果たしていることが予想される。
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