研究概要 |
ダイニンATPaseと微小管の相互作用はシングレット微小管を用いたin vitro motility assay系によって分子レベルでの解析が現在さかんに行われている。しかし鞭毛・繊毛運動の解析にはこの素過程を基礎としたより高次レベルでのin vitro assay系によって解析しなければその解明はむづかしい。本研究は、より高次の系としてダイニンをコートしたグラススライド上でのダブレット微小管の運動,シングレット微小管にダイニングを予め結合させたcomplexの形成とその運動,complex bundleの形成とその運動などのsliding movementを比較検討することによって,より高次の構造をもつ鞭毛・繊毛運動の特質を明らかにすることを試みた。 すでに、ダブレット微小管の22Sダイニン上での運動の解析は、ATP濃度,Ca濃度を変化させて行い、Caによる鞭毛運動の制御の分子レベルでの成果として発表した。complexのsliding movementについては、ランダムにダイニンをコートして、結果よりより速い運動を惹起するなどの重要な成果を得て、これも発表している。 最終年度としては、これらcomplexの運動を惹起しているダイニンと微小管の相互作用の基礎となる両者間の結合をしらべることを試みた。両者の結合にATPを加えて,ATPにより解離するかしないかをATP-sensitive bindingとinsensitive bindingに分けて、遠心分離、SDS-ゲルによる定量によって、その結合がいろいろの組合せのcomplexに拘らず、22Sダイニンは、略90%が、ATP-sensitive bindingをしていることが明らかになった。この成果がcomplexのsliding運動にいかに寄与しているのかをさらに検討したい。
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