研究概要 |
ダイヤモンド薄膜を気相成長で作製し、電子デバイスなどに利用することを実現する場合、そのエピタキシアル成長が非常に重要な課題となる。これまで幾つかの下地を用いてエピタキシアル成長を試みたが、成長をかなりの高温下で進行させねばならないこと、更に高密度の水素雰囲気での反応であること等の理由より使用可能な下地は極く限られたものとなる事が明らかになった。 下地材料としてcBN,Ni,Si,SiC,Graphite等を用い、それらの幾つかについては表面にほう素処理を施し、もしくわほう素を多量に添加したSiを用いる等の多くの試みをしてエピタキシアル成長を行なった。またBPの単結晶の作製を行ない、その表面での成長も試みた。しかし、結果としてエピタキシアル薄膜が再現性良く成長可能な下地はcBNのみであった。その理由として、ほう素と炭素の化学結合はかなり強く、下地表面にほう素が安定に存在できなかったためと考えられる。cBN(111)表面において、エピタキシアル成長が観察されたのは(111)ほう素面のみであり、成長中にほう素を添加することによりP型の半導体薄膜を再現性良く作製することができた。 新しい発見として、成長の極めて初期段階に於いて非常に薄い炭素膜(AFMの観察で膜厚は10A以下と推定される)が形成され、そこに選択的にダイヤモンド粒子が成長を始める事が見出された。この薄い炭素膜の構造は今のところ決定されていないが、エピタキシアル粒子がここから成長をする事からみて方位を持った膜で有ることが予想される。またこの膜はSEM観察中に非常に明るいコントラストを与えることが見出された。 そこでN型の電気伝導を持ったcBN(Si添加)を用い、その表面に上で述べた薄い炭素膜(ほう素添加)及びP型ダイヤモンドの成長を行ない簡単なデバイスを作製した。これに電界を加えると電界放出特性と一致する電流-電圧特性が得られ、特に薄い炭素膜の場合には電子の放出量が多く、金属(モリブデン)の数倍となった。またこの表面は極めて安定で長時間の動作にも耐え得ることが明らかになり、応用の面において一歩進む結果となったとが得思われる。
|