研究概要 |
本研究で得られた成果は以下のようにまとめられる。 (1)熱的ゆらぎに励起された表面波リプロンからの微弱な散乱光を検知するために,100μmの回折格子を用いた光ヘテロダインの光学系を設計・製作した。試料として常温のn-ペンタンを用いて実験した結果,リプロンからの散乱光信号を十分検知できることが明らかになった。 (2)表面へのレーザーの入射角や使用する回折光の次数などについて,実験的検討を行い最適な条件を得ることができた。この条件で測定された散乱光のパワースペクトルの中心周波数より表面張力が,半値幅より動粘性率が原理的に計算できることが確認された。 (3)高温融体測定のための第一歩として,BN(窒化硼素)製のるつぼの設計を行った。また,赤外線イメージ炉を利用した約1600℃まで使用可能な実験装置の設計を行った。上方からのレーザの光路を確保しかつ十分に温度が上昇するような配慮をした。 (4)リプロンの波数選択の方法として,回折格子を使用しているが,よりリプロンからの散乱光強度を強くするために,従来の100μmの回折格子から200μmに変更した。その結果,従来に比べ非常にS/N比の良いスペクトルが得られ,表面張力,動粘性率の再現性を向上させることができた。常温の水の測定の場合の再現性は,表面張力については±0.4%,動粘性率については±11%であった。 (5)再現性の向上により,ばらつきの少ないデータが得られるようになった結果,表面の汚染のために表面張力が時間とともに少しづつ減少していく様子を捉えることが可能になった。
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