研究概要 |
研究実験の概要 従来の光ディスクシステムは,1.2mm厚のプラスチック基板をとおして,半導体レーザビームを基板裏面に記録されたビット情報の位置に集光させ,記録ビット情報を読み出したり,基板裏面に位置する情報記録用薄膜にパルス幅の狭いパルスで強度変調されたレーザビームを集光させて結晶性の記録薄膜を加熱溶融させ,急冷効果によって生じるアモルファス性ビット記録を行っていた。 従来の方法による欠点は, (1)半導体レーザから射出されたレーザ光の波面が,レーザと記録媒体との間に挿入されたビーム整形やビーム集光のための数多くの光学部品とディスク基板とによって乱されてしまうこと。 (2)厚い基板をとおしてビームを収束させるために開口数(NA)の大きい対物レンズが必要であり,(NA)^2に逆比例する焦点深度のために焦点制御用アクチュエータが必要であること。またその重量のために速いアクセスに制約が加わること。 であった。 本研究の結果, 1)レーザと記録媒体との間に,基板もいかなる光学部品も挿入せずに,半導体レーザから射出したレーザ光で直接記録媒体にビット記録できることを基礎実験によって確認した。 2)記録媒体として有機色素を用いると照射レーザ光圧によってレーザ光を吸収した色素が半導体レーザ側に飛散し,レーザ射出端面に付着することも確認できた。 3)付着した有機色素が再びレーザ光を吸収し,レンズ状物質を形成し,平行平面鏡で成る半導体レーザ共振器が非安定共振器となるためにレーザ発振閾値電流を押し上げることも確認できた。 4)フロッピーディスクを回転させ,本研究によるヘッドをフロッピーディスクに押しつけても両者の間に空気流があるためにフロッピーディスクに傷がつくことがないことを確認した。 今後の研究として (1)書き込み後の読み出し実験に必要な半導体レーザ射出端面への反射防止膜(反射率0.01%以下)の形成 (2)記録ビット読み出し実験 (3)光ヘッドと光フロッピーディスク間隙の精密測定 (4)相変化媒体による光フロッピーディスク試作 (5)空気流体力学のソフト計算 を予定している。 これら一連の実験は新しいレーザ光学に(ニアフィールド光学)研究の一端を切り拓くことになろう。
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