研究概要 |
1.本年度は、伝統的屋敷型住宅(重要文化財〓家)を対象として(1)熱環境の冬期の実測(93/1/29〜2/2),気温測定点27点,(2)生活行動の観察記述調査(3日間の泊り込み調査),(3)屋敷内の外部空間における生活用具等の詳細な観察調査を実施した。また,この冬期の実測及び観察調査で得たデータと夏期(91/9/2〜9/6)の同様のデータと比較し,季節間の変動が環境特性及び住み手の行動にどのような影響を与えるかを考察した。 2.この結果、1)住宅周辺の外部気温差は冬期では夏期程の差異はみられないが、個体域での気温差は夏期と同様にみられる。このことは、夏期の場合が屋敷内の外部の環境変化による外圧としての個体域の熱環境状態の変化であるのに対して、冬期は個体域それ自体の内圧による変化であると考えられる。2)夏期及び冬期の熱環境状態の把握から住宅内部の土間と屋敷内を東西に分断して南北の空間域を形成する「くさび」の両者によって一種の環境構造が形成されていることが確認された。この構造によって各種の個体域がそれぞれの環境幅をつくり、独自の環境特性を持つことが明らかになった。3)生活行動では、住み手は熱環境状態に規定されて日常的な生活行動を遂行していること。特に、着座姿勢による滞在型行動である居方行動では環境対応性がきわめて強いことが示された。また、機能目的の明瞭である家事行動においても環境状態を反映した行動が行われ、全体として住み手の認知レベルに応じて環境状態に対応した生活行動様式が、夏期及び冬期において形成されていることが明らかになった。
|