研究概要 |
地下岩盤内に空洞を掘削すると,空洞周辺岩盤に応力再配置が生じる.この応力再配置に関する理論は,通常,岩盤を等方均質な連続体と仮定した弾性解析結果を基礎に組み立てられている.これによれば,例えば,円形断面空洞掘削時の接線方向応力の増大は空洞壁面で最大であり,空洞から遠ざかるにつれて低減するとするのが定説である.しかし,このような応力再配置が現実の岩盤で実測されたことは少なく,この点でこの定説は十分実証されているとはいえない. 本研究では,応力再配置挙動の実態を把握するため,AEと岩盤内の微小ひずみの変化の測定に着目し,まずこれらの測定手法の開発と原位置測定への適用性の検討を行った.次にこの結果に基づき,3地点の揚水式地下発電所空洞建設地点で,空洞掘削時に周辺岩盤から発生するAEと微小ひずみの変化の測定を行い,必要に応じ電力各社が施行管理のために行った岩盤変位等の各種測定結果と比較し,節理や既存亀裂を含む現実の不均質な岩盤における応力再配置挙動を検討した.その結果,空洞掘削に伴う周辺岩盤内の応力の増大が,節理などの不連続面の噛み合いや岩盤剛性の不均質性のために,岩盤中に2本の柱を形成するような形で支えられる場合があることがわかった.また,空洞周辺岩盤中にAEセンサーを3次元的に配置してAE測定を行い,そのメカニズム解を求めて発生機構を調べた結果,AEの発生原因となった破壊面の方向や破壊時の主応力の作用方向は,岩盤の卓越節理の方向,空洞形状,初期地圧と岩盤変位の測定結果と合理的に対応し,この手法が地下空洞の安定性評価にきわめて有用であることがわかった.
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