研究概要 |
「太陽熱膜電池」の主要構成要素である太陽熱蒸留器とイオン交換膜を利用した淡海水直接発電装置(透析電池)の製作,およびそれらの性能試験,さらにはそれらの性能を説明するための数値モデルの構築を目的としてこの2年間にわたる研究を行ってきた.全体としてみれば,それらの目的はほぼ達成された.まだ屋外試験をする段階には至っていないが,現在さらなる改良のための計画を立て,実行しつつある段階である.以下,太陽熱蒸留器,透析電池,数値モデルについて得られた成果を項目別に述べる. 1.太陽熱蒸留器:当初の予定であった傾斜トレイ式ではなく,傾斜ウィック型蒸留器を製作した.集光面積80×90cm^2であり,ウィック材としては衣料用新素材のソーラα使用した.実験室内でソーラーシュミレータを使った性能試験を行い,太陽熱膜電池の一部として利用した場合の必要な集光面積を計算した. 2.透析電池:コンパートメント数101室,イオン交換膜一枚当りの有効面積475cm^2とこれまでで最大の透析電池を製作し種々な条件下で性能試験を行った.温度範囲25〜50℃,淡水流量100〜1000ml/min.において電池の開放電圧は約10volt,最大電力は約1wattを得た.これは温度の上昇,淡水流量の増加と共に大きくなる. 3.数値モデル:透析電池に関するWeinsteinとLeitzの単純化されたモデルに修正を加えた修正モデルを新たに提案し,測定値と比較した.その結果,このモデルは実験値を非常に良く説明することがわかった.このモデルを元に,大型化した場合についての予測をした結果,イオン交換膜の対の数200対,膜面積1m^2でほぼ30〜40wattの電力が得られることが予想された.太陽熱膜電池に対する数値モデルについては今後の問題として残されている.
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