研究概要 |
ヤング・デュプレの式における接触角はミクロ(アトミック)サイズで見た場合とマクロサイズ(SEM以上)でみた場合で異なるという考え方があるが,それを具体的に明らかにした例はない.その理由の一つに,ミクロ接触角の実験的な計測が難しいことがあげられる.CALPHADの分野では,インターアトミックポテンシャルを用いた計算が状態図の予測に大きな成果をもたらしている.CALPHADと比較すると,単なる2個体接触問題であるミクロ接触角の計算は難しいものではない.実験の難しさを計算機実験で軽減し,新しい材料のぬれ性(接触角)を予測計算することが可能になるのは時間の問題であろう.本研究ではインターアトミックポテンシャルを考慮した計算機シミュレーションを行い,接触角の問題に対する適用性を検討する.そしてマクロとミクロの境界および接触点近傍の表面曲率が二つの接触角に及ぼす影響を明らかにする.またこれを実験的に証明することも試みる. 当初としては,計算のみを予定していた.しかし,平成4年度に,代表者の所属する東京工業大学・生産機械工学科にAFMが入ることがほぼ確定している.AFMという滅多に使用できない装置がはいることもあり,実験的にも研究を進めることができる可能性がでてきた.また,毎回申請していた計算機と同等の性能を持った計算機を借りることができるようになった.計算のウエイトを減らして実験に力を割くことは,計算を決して机上の空論にはしない点でメリットとなるだろう.計算機の速度は日進月歩で早くなるという点を考慮すると,今回の予算は超高真空容器にあてて,計算は借用機で行いうほうが予算の合理的な使用という目的にかなうものと判断した.したがって,本研究では,実験的検討に重点をおき下記のよような結果が得られた. (1).超高真空における異種材料間の凝着力を計測する装置(将来AFMに組み込める)を試作.それにより,10〜1000μNの荷重を超高真空中で計測する事ができた.(2).表面状態の影響を考慮して金とシリコンウエハ,金とシリコン酸化物の界面に働く凝着力を計測した結果,金とシリコンウエハ間に働く凝着力は10μN以下で,金とシリコン酸化物の界面に働く凝着力は100μN程度であった.(3).表面凹凸を知るため,シリコン酸化物として熱酸化させたシリコンウエハと石英ガラスを比較した結果,表面凹凸のより少ない熱酸化シリコンウハではJKRモデルによりよりよく説明される事がわかった.
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