研究概要 |
本研究は、孔径25μmのナイロンメッシュを用いて土壌をいくつかのコンパートメントに仕切ったrhizoboxを組立て、中央に植物を育て根系を発達させ、根圏における養分の変動の機作について解析した。rhizoboxを用いることによって根から一定の距離に存在する土壌を根の混在無く得ることが出来、根からの距離にしたがった養分分布を解明できた。その結果次のことが明かになった。 1)養分元素の全濃度は変化無く、可溶性画分のみ根圏で変化していた。また、土壌pHは根圏での陰陽イオンのバランスにより、時には低下し時には上昇した。 2)Ca,Mg,Na,SO4,Clイオンはマスフロー運搬が植物による養分吸収より多いために根圏に蓄積した。 3)K,NO3イオンはマスフローより養分吸収が多く根圏で減少した。 4)重金属のZn,Cuイオンは根圏pHの変化に影響された。即ち、根圏のpHが低下したときに増大し、pHが上昇したときに減少した。これに対し、Mn,Feイオンの増大は根圏pHの変化によって影響されなかった。 5)Mn,FeイオンのRIを用いたトレーサー実験によりその移動を解析したところ、移動速度は遅くまたpH依存性ではないことが明らかとなった。またMnO2あるいはFe03を用いたトレーサー実験の結果、Mn,Feの可溶化は根圏土壌でより強く認められまた、根圏土壌にはMn,Feの溶解能が存在することが示唆された。さらに植物根の水抽出液にも同様な能力のあることも判明し、根圏土壌のMn,Feの溶解物質は根の分泌物質であると推定された。
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