研究概要 |
平成4年度〜5年度前半にかけて,アレキサンドリウム・タマレンセの連続培養法の確立を繰り返し試みたが,スターラーあるいは滅菌空気を使った緩やかなバブリングのいずれの方法でも不可能であった.詳細な観察から,本種は撹拌が強くなると培養容器の壁面に付着する性質があることが分かった. このような事情から,平成5年度はバッチ培養法および半連続培養法を駆使して,次のことを明らかにした. (1)本種の最適水温,塩分は,15℃,32〜35〓であった. (2)最大比増殖率はネジ口試験管を用いて実験した場合には0.26d^<-1>,1lフラスコを用いた場合0.48d^<-1>で,得られた結果には容器の壁効果が明瞭に見られた. (3)光強度の閾値は30μEm^<-2>s^<-1>が得られ,これ以下の弱光では増殖できないことが明らかになった. (4)24時間にわたる観察から,明期にPO_4-Pの取り込みを行い,暗期に分裂することがわかった. (5)細胞内最小リン含量は0.56pmol cell^<-1>であった. (6)リン酸態リンの最大比取り込み速度は1.59h^<-1>,半飽和定数は1.85μMであった. (7)同様の実験をスケレトネマ・コステイタムについても行い,二者の比較を行った.その結果,アレキサンドリウムがスケレトネマに勝るような有利な点は確認されなかった.従って,現場海域でアレキサンドリウムがスケレトネマに優越するかもしくは共存しうる可能性は低く,アレキサンドリウムがその細胞数を維持するためには,珪藻類の減少もしくは消滅が必要であろうと推察された.
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