| 研究概要 |
本研究の目的は,土壌密度変化に対する作物根系パターン変化を,トウモロコシを素材にしてコンピュータシミュレーションすることにあった.全体としては2次元で研究を進め,3次元根系生長モデルの作成も検討した.研究成果は以下の通りである.
(1)根群形態の全体的特徴を記述するためのメタルールを,べき分布(自己アフィンフラクタル),根密度関数および根系分布境界曲線に着目し,根系サンプルの観測データに基づいて定式化した.
(2)不定根と1次および2次の分枝根発生ルールを観察結果より統計的に定め,確率Lシステムで定式化した.
(3)根端伸長運動は,文献的調査により,NutationとGeoreaction及び土壌粗孔隙への進入確率から定式化した.
(4)以上の三つの階層にわたる定式化,すなわち根群分布の全体的特徴,根系分枝ルール,根端伸長運動の定式化を有機的に結合して総合化し,かつ土壌密度条件の影響を「環境スイッチ」という概念でテーブルスイッチ関数としてモデルに導入した.これを階層的モデリングと名付けた.
(5)土壌密度を変えた根箱栽培実験では,土壌密度条件が異なると根群形態のみならず根密度分布にも明瞭な差の現れることを確認した.更に低密度土壌を持つ根箱では,低密度土壌域のサイズや形状が根密度分布に影響することを確認した.
(6)作成した根系生長モデルにより,根箱実験で得られた根系サンプルの形状をよく再現することを確認した.しかし根系生長モデルの2次元から3次元への拡張については,基本的に達成できなかった.
(7)更に多様な土壌密度実験および人工粗孔隙への根進入実験を実施し,3次元根系生長モデルの作成へ向けて研究を続行している.
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