研究概要 |
リボソーム蛋白遺伝子の発現調節及びその癌遺伝子産物による制御機構を明らかにすべく、L7a及びL37a遺伝子プロモーター構造と機能を明らかにした。L37aプロモーターは-122〜+195の間にある七つの核蛋白結合領域(A〜G)から構成されていた。領域E及びFについてはプロモタ-活性に寄与しているかどうか同定できなかったが、他の領域は全て機能しているものであった。領域Bは癌遺伝子産物Ets蛋白の結合部位を二つもっており、両者に結合する蛋白間の相互作用によりプロモーターの活性に最も寄与している領域であった。Ets蛋白結合部位は鶏L7aにも存在し、L37aプロモーターと共通の蛋白が結合することをプローブDNAの競合実験で明らかにした。領域DはマウスL30,L32プロモーターのδエレメントと相同のものと考えられるが、プロモーターの抑制に働くことを明らかにした。領域B,C,D,E,Gの相同配列は他の多くのリボソーム蛋白遺伝子にも種を越えてみられることからリボソーム蛋白遺伝子の協調発現に関与している可能性を指摘した。また、癌遺伝子産物Etsの結合エレメントは全てのリボソーム蛋白に存在するわけではないのであるが、このことはこの蛋白の異常により特定のリボソーム蛋白遺伝子(群)が発癌において過剰発現する、いわゆる非協調的発現が起こる可能性があることを示唆している。領域Bに結合するEts蛋白はUV-クロスリンク法及びSDS-PAGEにより分子量42,500及び62,500のポリペプチドから構成されていると推定され、L7aプロモーターでもほぼ同様のものが検出された。現在、この蛋白遺伝子のクローン化を更に進めている。
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