研究概要 |
本研究にたいしてその科学研究費の援助により、立体構造物のフラクタル次元計算プログラム(追加分)を、ライズ社に特別注文し作成した。そのプログラムを用いて、ヒト正常肝5例と肝硬変5例について検索を行った。また、同時に行っているトポロジー(位相幾何学)を用いた研究とも比較検討した。その結果、 1.正常肝だけではなく(平成4年度分で報告済み)、肝硬変の類洞の立体構造は、フラクタルであることがわかった。すなわち、類洞の複雑な立体構造を、フラクタル次元という指標により定量化し、比較することが可能となった。 2.それぞれの症例におけるフラクタル次元は、肝硬変では、2.06,2.11,2.13,2.22,2.13(平均2.13±0.05)、正常肝では、2.22,2.16,2.17,2.20,2.17(2.18±0.03)になった。 3.求めた類洞のフラクタル次元について、t検定を行ったところ、肝硬変と正常肝の平均の間には有意な差はなかった。 4.同時に行っている研究(トポロジーの指標である1次ベッチ数を用いた)では、肝硬変と正常肝の類洞の立体構造に、有意な差がみられた。そのことは、論文としてActa,Pathologica Japonica(1993)に発表した。 5.肝硬変と正常肝の類洞の立体構造の定量化において、フラクタル次元と1次ベッチ数とでは、異なった結果が得られたが、そのことは次のように解釈できる。すなわち、正常肝と類洞を何倍かに拡大すれば肝硬変の類洞と同じ程度の複雑さになる、ということを示している。
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