研究概要 |
外的増殖因子を全く含まない完全無血清培養可能,さらにトリプシン継代可能な,樹立されたラット肝臓由来悪性上皮系細胞株(SFRLE細胞株=ラット肝癌細胞株)を用いて,その自己増殖因子を単離精製した。 SFRLE細胞を完全無血清で培養し,馴化培養液を大量に集め,限外濾過法により分画分子量サイズにより分画分離濃縮を行った。分子量10kDa以上の部分にはラット正常腎線維芽細胞に対する増殖刺激作用(Paracrine growth factor)が,分子量3000以下の部分には自己のSFRLE細胞に対する増殖刺激作用が確認された。自己増殖因子活性の認められる分子量3000以下の部分を凍結乾燥法により濃縮し,セファデックスG^-15によるゲル濾過で分析した。分子量700Daに相当する部分に1つの活性ピークが認められた。ゲル濾過法での自己増殖因子活生フラクションを集め,脱塩装置(アシライザー)により脱塩を行い,逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)による分析を行った。分析では数本のピークが認められたが,開如後15分に相当するピークに自己増殖因子活性が確認された。現在このピークに相当する部分(単離・精製された自己増殖因子)を集め,さらに質量分析(マススペクトロメトリー),アミノ酸成分分析,アミノ酸配列分析の準備中である。Wスペクトロメトリーではフェニールアラニンの存在が確認された。逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)後の活性ピークを採取し,水,TFAを蒸発させ,さらにDWに再溶解した溶液には自己のSFRLE細胞に対し強い自己増殖刺激作用を示した。外的インスリン様増殖因子,TGF-α等はSFRLE細胞に対して増殖刺激作用を示さなかった。これらの点から私達が単離精製した自己増殖因子は今までに報告のない新しい自己増殖因子と考えられる。 又私達の精製した自己増殖因子はラット線維芽細胞,マウス3T3細胞には増殖刺激作用がなかったが,ヒト胃癌細胞に対しては増殖刺激作用が認められた。
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