研究概要 |
悪性リンパ腫の一型でHodgkinリンパ腫(HD)と関連の深いKi-1リンパ腫(Anaplastic Large Cell Lymphoma,ALCL)の発症に関わるt(2;5)染色体転座の切断点領域をクローニングし、その発症に関わる分子機構を明らかにすることを目的として解析を進めてきた。まず第一にt(2;5)染色体転座切断点を含むDNA領域をクローニングするために、第二染色体短腕上の転座切断点近傍に位置すると考えられるPOMC,APOB,MYCN遺伝子をマーカーとしてYACライブラリーのPCRスクリーニングを行った。その結果、APOB遺伝子を含む320kbと355kbの、POMC遺伝子を含む235kb,345kb,350kb,475kbの、MYCN遺伝子を含む220kbのシングルYACクローンを単離した。これらのYACクローンが転座点を含んでいるかどうか確かめるためにAlu-PCRにより作製したプローブを用いてFISHを行ったところ、いずれも転座に由来する染色体のうちの一方der(5)のみにシグナルが観察されたので転座点を含んでいないことがわかった。さらに、転座点に最も近いと推定されたPOMC遺伝子プローブを用いた高精度分染法によるマッピングでこの遺伝子は2p23.3上に存在することが明らかになった。従って、転座点はこの部位よりセントロメア側(2p23.1-p23.2)であることが予測された。 2p22-p24にマップされた16個の、5q35.1-q35.2にマップされた4個のコスミドクローンについても転座点を含むかどうか調べたところ、このうちの一つcCl2-496が転座点を含んでいる可能性が示唆された。現在、このコスミドクローンをプローブとしてt(2;5)細胞のDNAを各種の制限酵素で断片化し転座に伴う再構成バンドが検出できるかどうか検索しているが、原因遺伝子の追究には至っていない。今後、クロモソームウォーキング、フィジカルマッピングなどにより転座点を含むDNA断片を単離することを目指している。
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