研究概要 |
本年度は先ず犬糸状虫の抽出DNAの制限酵素による切断片の多型性について検討した。他教室の実験後の犬より犬糸状虫成虫を摘出し、-20℃に保存した。DNAの抽出は虫体を細切後、Tris‐HCLバッファー中においてプロテナーゼK,及びSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)にて消化し、フェノール及びクロロフォルムで除蛋白を行なった。これをさらにエタノールにてDNAを沈澱後、乾燥させTEバッファーに溶解し、分光光度計にてその精製度及びDNA量を測定した。これらの分離DNAを以下の18種類の制限酵素、すなわち Alu I,Ava I,Ava II,Bam H I,Bag I,Hinf I,Kpn I,Msp I,Rsa I,Sac I,Sfi I,Xba I,Xha Iにより切断し、ミューピッドの電気泳動装置により0.8%Agarose1600 TEA bufferゲルにて泳動をした。一般に線虫の有するDNAの塩基対数は億のオーダーであり、上記酵素により数万〜数十万の断片を生ずるので、これはEtBr(エチジュームブロマイド)の染色によって一般的にスメヤー状の泳動像を呈すると思わわれる。しかし、今回の我々の実験においては現在までのところ、少なくともAva I においては 3本、Ava II に1本、Hind III に 2本、MSP I に 1本、Xba I に 2本それぞれバンドが認められた。このことはこれらのバンドの位置及び数を他種フィラリア類のものとの相違について詳しく分析し、そのパターンをそれぞれの種において確定すれば、組織標本中の犬糸状虫の同定のみならず他種フィラリアを始め寄生虫類の同定の新たな手段の開発につながるものである。
|