研究概要 |
各種抗酸菌の標準菌株および臨床分離菌株につき,菌種特異的な酵素活性(カタラーゼ,アリルスルファターゼ,ナイトレートレダクターゼ,β-ラクタマーゼ),色素産生,薬剤耐性(Km耐性,Tc耐性)などの性状試験を実施し,それらの遺伝子のクローニングに適した菌株の選定を行った.またクローニングした遺伝子を導入後,それぞれのマーカーのスクリーニングのための培地について検討を行った.性状試験を進める過程で迅速発育抗酸菌(M.fortuitum,M.chelonae,M.smegmatis)にウマおよびウサギ赤血球を溶血する活性が検出され,この活性物質の本態は菌体外(培養濾液中)に分泌されるが,非タンパク性でありクローニングのためのマーカーとしては適当でないことが明かとなった.しかし今後その病原性との関係についての興味が残された. 性状試験によって選定された菌株よりその染色体DNAを抽出,制限酵素(Bglll)処理,さらに大腸菌プラスミド(pACYC177)とligationしてライブラリーを作成し大腸菌への形質転換を試みたが,いずれのマーカーで選択しても抗酸菌遺伝子の発現を認めるクローンは得られなかった.他のベクター(pHSG298)および制限酵素を用いてさらに検討を続けている. M.fortuitum由来のプラスミド(pMF129)と大腸菌由来のプラスミド(pACYC177)との組み換えによりシャトルベクターpUT21(19.2kb)を構築したところ,大腸菌(C600 K12)およびM.bovis BCG双方への導入が可能であった.それ故クローニング用ベクターとして適するサイズへの改良(短縮)を試みているが,以後早急にその改良を実現しクローニングに入りたいと考えている.
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