研究概要 |
(1)ヒト膵癌細胞株におけるK-ras癌遺伝子の点突然変異の検討 ヒト膵癌細胞株:MIAPaCa-2,HPC-1,3,4,Panc-1,HaPTIの6種でHaliassonらのPCR変法にてK-rasのcodon12の点突然変異を確認した。 (2)HMG-CoA還元酵素阻害剤によるin vitro増殖抑制実験 HMG-CoA還元酵素阻害剤の一つであるsimvastatinを用いて,4種のヒト膵癌細胞株:MIAPaCa-2,HPC-1,Panc-1,HaPT1についてMTT assayにてin vitro増殖抑制実験を行った。simvastatin 0.1〜100μg/mlで増殖抑制効果をMTT assayにて検索し,濃度依存性の増殖抑制効果を認めた.IC50は,MIAPaca-2では2.6μg/ml,Panc-1では6.2μg/ml,HPC-1では1.2μg/mlであった。[^3H]thymidine uptake によるDNA合成,Western blottingによるp-21rasのisopre-nylationは10μg/ml濃度のsimvastatinにより抑制された。また flow cytometryによる検討ではsimvastatin 10μg/ml濃度でG1→S期移行が抑制されていることが確認された。 (3)Farnesy1 transferase inhibitor(FTI)によるin vitro増殖抑制実験 FTIであるGliotoxin(GT)を用いた。腫瘍細胞はH-ras transformed fibroblastを用いた。Western blottingではGTは濃度依存性にp-21rasのfarnesy1化を抑えた。MTT assayではIC50は0.3μg/mlであった。GTのcytotoxic doseではDNA fragmemtation,chromatin condensation,nuclear fragmentation,が確認され,GTはアポトーシスを誘導することが確認された。 以上より,p21-ras活性化機構を抑制するHMG-CoA還元酵素阻害剤および,Fa-rnesyl transferase inhibitorはin vitro増殖抑制実験にて,p21-ras活性化腫瘍細胞の増殖を抑制し,抗腫瘍剤としての有効性が認められた。
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