研究概要 |
今までの我々の研究により、以下の点が明らかとなった。 ヒト潰瘍性大腸炎については、病変粘膜内に小桿菌および球菌の侵入が認められた。この病変粘膜を採取し、抗生剤を用いた特殊粘膜培養を施行したところ,侵入菌はBacteroidaceae,FusobacteriaとStreptococciであることが判明した。これらの分離株を同定し、菌毒素の分析を行ったところ、BacteroidesとFusobacteriumの2株にVero toxin産生株があることが発見された。さらに両菌はHela細胞に対し細胞侵入性も有していることが証明された。Vero toxinは粘膜障害性を発揮することから,この両菌が潰瘍性大腸炎の原因となる得ることが、示唆された。 デキストラン硫酸投与による実験的潰瘍性大腸炎については、デキストラン硫酸投与により、マクロファージの細菌貧食能が低下することが証明された。又、ヒト潰瘍性大腸炎と同様に粘膜侵入菌の存在が認められた。さらに、糞便中のデキストラン硫酸の有無を調べたところ、3〜5%しか排泄されていないことから、デキストラン硫酸の大部分は腸管から吸収されたり、分解されることが判明した。このことから、テキストラン硫酸が腸管で吸収され、マクロファージにとりこまれ、その細菌貧食能を低下させることで、Bacteroidaceaeを始めとする腸内細菌の内で、病原性を有している菌が、粘膜内に侵入したり、あるいは毒素を産生し粘膜障害をひき起こすのではないかと推測された。また、病変部の免疫グロブリンが慢性化に伴って、IgAからIgG主体となっていくことが観察された。ヒト潰瘍性大腸炎ではIgGが有意に多いという報告が多く、この点で類似性が見られた。また粘膜局所の免疫グロブリンが、病変の慢性化に伴ってclass changeをするという点で興味深い結果であった。
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