研究概要 |
1.慢性乾性咳嗽に関する臨床的研究 (1)咳型喘息とは異なる新しい疾患概念として「アトピー咳嗽」を提唱した. (2)アトピー咳嗽では,気管支拡張薬は無効であり,メサコリン気道過敏性は正常であり,カプサイシンに対する気道の咳受容体感受性は亢進している. (3)アトピー咳嗽の組織学特徴は,以下の成績より中枢気道の好酸球性炎症であることが示唆される.すなわち,気管支肺胞洗浄液中には好酸球はみられず,気管支洗浄液中には好酸球はみられず,気管支生検組織には好酸球が僅かにみられ,高張食塩水吸入による誘導喀痰中には気管支喘息に匹敵する程度の好酸球がみられた. (4)アトピー咳嗽の治療には,ヒスタミンHI-拮抗薬とステロイド薬が有効である. 2.好酸球性気管支炎に関する動物実験 (1)モルモットにポリミキシンBを1回/週,3週間経鼻投与することによって,好酸球性気管支炎の作製に成功した. (2)本モデルでは,ヒスタミンに対する気道過敏性は亢進しておらず,カプサイシンに対する気道の咳受容体感受性は亢進していた. (3)ニューロペプチド受容体拮抗薬(FK-224)とトロンボキサン受容体拮抗薬(S-1452)は,本モデルの咳受容体感受性亢進を有意に抑制したが,β_2交感神経刺激薬(プロカテロール)は抑制しなかった. (4)ヒスタミンHI-拮抗薬(アゼラスチン)は本モデルの咳受容体感受性亢進を抑制した. 3.結論 以上の研究成績より,慢性乾性咳嗽(病的咳嗽)には少なくとも二つの病態があることが示された.すなわち,アトピー咳嗽では中枢気道の好酸球性炎症のよる咳受容体感受性亢進,咳型喘息では気道全体の好酸球性炎症による気道過敏性亢進に基づく気管支平滑筋の収縮である.
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