研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)における動脈壁構造の特徴と,脳梗塞巣を定量的・半定量的に検討した。 方法 1.50才以上のALS18例,これと比較する目的で年齢相応のパーキンソン病12例,多系統変性症15例,アルツハイマー病12例,担癌患者15例,その他対照17例を検索した。 2.大・小脳・脳幹割面の肉眼カラースライドを使用し,光顕標本所見に基づいて脳梗塞巣の局在と範囲を半定量的に検討した。 3.大動脈,冠状動脈,腎動脈,内頚動脈,前・中・後大脳動脈,椎骨・脳底動脈及び心,腎,脳・脊髄実質内小動脈のパラフィン切片を作製し,HE,マロリー,エラスチカ,PTHA染色を施行して,内膜浮腫,内膜肥厚,アテローマ,石灰化,内腔狭窄,内弾性板増生,中膜変性,中膜肥厚を,画像解析装置により計測し,また相互の相関を検討した。 結果 1.対照群およびパーキンソン病群,OPCA群,アルツハイマー病群,担癌群ともに,大動脈や冠状・腎動脈ならびに前・中・後大脳動脈,椎骨・脳底動脈では種々の程度の内膜肥厚,アテローマ,内弾性板増生・断裂,中膜の変性・肥厚が認められた。高血圧,糖尿病合併症例では,これらの所見が全般に進行していた。 2.一方ALS例では,一般に動脈硬化性変化が軽く,それはとくに頭蓋内動脈で明らかで,とりわけ内膜と中膜の肥厚は軽微であった。高血圧合併ALS例では,硬化性変化がやや進行していたが,頭蓋内動脈に内膜と中膜の肥厚・線維化はほとんど認められなかった。 3.脳梗塞巣は,ALS例では他症例群に比較し,少 数例で微小なものが認められたにすぎなかった。
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