研究概要 |
通常の方法でhuman T lymphotropic virus type I(HTLV-I)抗体陰性の神経疾患患者において,ウェスタンブロット法によるスクリーニングを施行し,血清学にindeterminate(判定保留)である症例を研究対象としてきたが,commercial kitを用いた場合には,p19を主としたgag関連蛋白に対して非特異的に反応することが,当初考えていたよりも多く認められた.このため,よりpureなウイルス抗原を用いて吸収試験を加え,確実なindeterminate症例を選別して対象とした.この中の1例では,その末梢血単核球中にHTLV-I関連sequenceがPCR法によって検出された.したがってindeterminate症例の少なくとも一部にはHTLV-Iの感染が示唆された.また別のindeterminate症例では,その家族(健常者)にも同様の血清反応を示すものが認められた.次にHTLV-I associated myelopathy(HAM)において認められるHTLV-Iに特異的な細胞障害性T細胞(CTL)がindeterminate症例でも検出されるか否か検討した.対象患者末梢血より樹立したB cell lineにHTLV-I recombinant vaccinia virusを感染させたものを標的細胞として,^<51>Cr release法によりCTL活性を測定したが,indeterminate症例ではHTLV-Iに特異的なCTL活性は検出されなかった.これに対してHAM患者ではHTLV-Iに特異的なCTL活性が検出された.indeterminate症例の中には病像がHAMに類似している例もあり,そのpathogenesisがHAMと同一であるとすれば,HTLV-Iに特異的なCTL自体はHAMのpathogenesisにあまり関係しない可能性もある.
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