研究課題/領域番号 |
04807063
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
塩之入 洋 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20128599)
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研究分担者 |
高崎 泉 横浜市立大学, 医学部, 助手 (00244492)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1994年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
1993年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1992年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 動脈硬化症 / 高血圧 / 血管病変 / ファイブロネクチン / 細胞増殖因子 |
研究概要 |
5週齢のDahl食塩感受性ラット(DS)に食塩負荷を1、4、12週行ない、各時点における大動脈壁ファイブロネクチン(FN)のmRNAレベルを測定したが、幼若型FN、総FNいずれも、食塩負荷による高血圧により増加しなかった。しかしながら32週間食塩負荷を行ない長期間高血圧を持続させると大動脈壁FNの発現が明らかに高血圧動物で高かった。したがって、DSは他の遺伝性高血圧モデル、例えば高血圧自然発症ラット(SHR)などと異なり、血圧の上昇および加齢により血管壁FN発現が増加しないことが明らかになった。つまり、この系統のラットにおいては、初期の血管肥大の発生および維持にFNが重要な役割を果たしている可能性は小さく、むしろ高血圧性血管障害の末期の指標となる可能性、重症高血圧に関連して変化する因子が血管壁FNの発現調節機構に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、レニン-アンジオテンシン(RA)系を阻害する薬物の投与によりSHRでは有意に血圧の下降を認めるが、DSでは血圧が変化しない。この際、SHRでは有意に大動脈FN mRNAレベルの下降を認めるが、DSのそれは変化しないことも明らかになった。これより、DSにおいては、血圧の維持および大動脈壁FNmRNAの発現調節におけるRA系の関与は少ないと考えられるが、SHRにおいては、アンジオテンシンIIがアンジオテンシンII1受容体を介して血圧の維持、大動脈FNの発現調節に関与し、高血圧性血管肥大の発症機序に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。これらの実験の発展として、摘出血管を用い、臨床医学の現場において頻用されている血管拡張用バルーンカテーテルを挿入し、6気圧にて内腔より加圧し、そのFN、プロトオンコジーン発現におよぼす影響も観察した。現時点で施行された短時間(10分前後)の加圧では、FNの発現には著変を認めないが、c-fosの発現は著しく増加することが明らかになっている。総括として、本研究により,高血圧自体は血管壁FNの発現調節機構において、直接単独で作用する発現促進因子ではないことが明らかになった。また、血管壁FNの発現調節機構は実験高血圧モデルにより異なること、DSにおいては重症高血圧に関連する何らかの因子が、SHRにおいてはアンジオテンシンIIがアンジオテンシンII1受容体を介して血管壁FNの発現を促進することが明らかになった。また、冠動脈の動脈硬化の治療として盛んに施行されている冠動脈形成術には、術後再狭窄の問題があるが、本研究にてin vitroにてバルーンカテーテルを用いて血管拡張を施行すると、NFの発現には著変を認めないが、増殖関連遺伝子であるプロトオンコジーン(c-fos)の発現が著増することが明らかになったことは、術後再狭窄の問題解決への糸口として重要であり、今後の発展が期待される。
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