長波長紫外線(UVA)は皮膚老化や発ガンの一つの原因として近年注目されてきている。UVAの作用を検討するにあたって、UVA領域に吸収を有する生体内物質である水溶性ビタミン(リボフラビン、ピリドキシン)に注目した。まず、これらの物質がUVA照射により細胞障害性を示すかどうかを検討したところ、リボフラビン、ピリドキシンの順で強い細胞障害性の出現することが判明した。更に、この細胞障害性は、照射後長時間にわたって持続することもわかったため、その原因は光照射によりビタミンから由来した安定な分解産物と過酸化水素の関与が疑われた。 光照射水溶性ビタミンの細胞障害性の原因の一つの可能性である過酸化水素の産生について検討した。方法は、西洋ワサビペルオキシダーゼが過酸化水素と結合した時の吸収波長の変化で検討した。その結果、ピリドキシンでは微量の過酸化水素の産生が見られたが、細胞障害性を生じさせる程高濃度ではなかった。従って、ピリドキシンの場合の細胞障害性の原因は光分解産物の可能性が高いと判断された。一方、リボフラビンの場合は非常に高濃度の過酸化水素が産生されていた。カタラーゼで過酸化水素を分解すると細胞障害性は消失したので、光照射リボフラビンの細胞障害性はその多くが過酸化水素によるものと考えられた。 UVA照射により出現する上記細胞障害性に対する酸素の関与を検討するため、酸素欠乏条件下で光線を照射した。ピリドキシン存在下では細胞障害性は減弱したが、その原因の一部は、ピリドキシンの光分解速度の減少であることが認められた。リボフラビン存在下では細胞障害性は著明に増強した。その原因は今後検討する予定であるが、短命な活性酸素種である可能性が強いと考えられた。
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