研究概要 |
妊娠糖尿病及び糖代謝異常妊婦は巨大児の合併率が高く重要な臨床課題である。妊娠中の軽度糖代謝異常の児に及ぼす影響の機序は現在不明の点が多い。膵島の同種移植によって作製したSTZ糖尿病妊娠ラットを作製し母体耐糖能異常と胎仔体重との関係を検討した。胎仔体重は平均母体空腹時血糖値が130mg/dl未満の時正相関,130mg/dl以上では負相関を示した。同様に胎仔体重はブドウ糖負荷試験時の血糖値の総和であるZBSが460mg/dl未満の時正相関,460mg/dl以上で負相関を示し,胎仔体重と胎仔膵重量とは良好な正相関を示した。以上耐糖能異常妊娠ラットの胎仔発育に臨界血糖値がある事が認められ第29回ヨーロッパ糖尿病学会(於イスタンブール)及び第37回日本糖尿病学会(於徳島)において発表した。本年度は同ラット出産胎仔膵の組織学的検討を加えた。巨大仔5例を対象とし正常体重仔7例を対照とした。新生仔膵の光学顕微鏡的組織標本を作製。NICON光学社画像解析装置で膵臓切片単位あたりにおける膵島の平均面積と免疫染色による膵島のインスリン(B)グルカゴン(A)ソマトスタチン(D)陽性細胞の面積を測定し,巨大仔群と正常群を比較検討した。巨大仔群の膵組織における膵島,B,A細胞の平均面積比率は正常群より有意に増加。A/B細胞比率の変動は認められなかった。D細胞面積比率は両群に差が認められなかった。以上軽度糖代謝異常妊娠ラットの出産した巨大仔は,膵島の過形成及びインスリンの分泌機能亢進状態を示し従来ラットでは高血糖状態では胎仔は過小体重児が出産されるためヒト巨大児のモデルにはならないとされてきたが,本実験によりヒト巨大児のモデル動物になる事が示された。第2回妊娠と糖尿病の国際シンポジウム(於エルサレム)及び第38回日本糖尿病学会(於栃木)において発表予定である。
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