研究概要 |
薬剤を生体分解性高分子マイクロスフェアに封入させ,その高分子の種類,分子量を変えることにより,薬剤の放出を制御することが可能である。我々は,眼科領域における生体分解生高分子マイクロスフェアの有用性を既に報告している。今回は,網膜色素上皮細胞の貧食性に着目して,マイクロスファアに薬剤を包含させ、それを投与することにより効率よく薬剤を細胞内に運搬し,その機能を薬物的に修飾することが最終目的である。その前段階としてin vitroにおいて,培養ヒト網膜色素上皮細胞を用いて,マイクロスフェアの貧食を確認し,in vivoでは,家兎眼の網膜下にマイクロスフェアの懸濁液を注入し,経時的にマイクロスフェアの細胞内での動態および周囲組織に対する影響を検討した。成果を以下に示す。 ヒト網膜色素上皮細胞を培養し,直径5ミクロン以下の蛍光色素,1,4bis〔2-(5-penyloxazolyl)]-benzene(POPOP)を含むポリ乳酸マイクロスフェアを投与した結果,細胞内のPOPOP濃度が経時的に増加することが確認された。走査型電子顕微鏡および蛍光顕微鏡により形態学的にもマイクロスフェアの貧食を確認した。 家兎眼において,経硝子体的にマイクロピペットを用いて,直径5ミクロン以下の色素,sudan black Bを含むポリ乳酸マイクロスフェア(分子量:11,000)の懸濁液を網膜下に注入した。投与後6時間,24時間,1週間,1ヶ月の投与部位の組織切片を作成した。マイクロスフェアは投与後6時間から網膜色素上皮内に確認され,1ヶ月後でも認められ。神経網膜には大きな影響は認められなかった。
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