研究概要 |
プリン受容体はBurnstockによってP_1およびP_2の2種類に分類され,前者はアデノシンとAMPに特異性が高く,アデニレートシクラーゼ系の活性化あるいは抑制に関与していること,また後者はADPとATPにより特異性が高く,PLC-Ca^<2+>系を賦活することが明らかにされている。またP_1受容体はさらにA_1〜A_3に、そしてP_2受容体はP_<2X>,P_<2Y>,P_<2T>,P_<2Z>などの受容体サブクラスに細分類されている。神経,筋における本受容体の機能はいくつか知られているが,上皮組織における本受容体の生理機能についてはなお不明な点が多い.そこで本研究では,EGF受容体を多量に発現しているA-431ヒト類表皮癌培養細胞を用いて研究を行い以下の結果を得た。(1)種々のヌクレオチドによる[Ca^<2+>]_i上昇のリガンド特異性とEGF受容体のモジュレーション間には相関関係が認められ,プリン受容体刺激が細胞内情報伝達系を介してEGF受容体の機能調節を行っていることが明らかになった(クロストーク).(2)ATPやTPAなどに加えて,ブラジキニンはEGF受容体のりん酸化を促進し,EGFの受容体への結合を抑制した.これはprotein kinaseCを介したEGF受容体Thr-654のりん酸化によるものであったが,受容体抑制は,ブラジキニンがホスホプロテインホスファターゼを活性化し,EGF受容体の脱りん酸化を行うため一過性であった(恒常性維持機構).(3)イノシトールりん酸は細胞の生理機能の調節に重要な働きをするので,その前駆体の生合成系も,枯渇されないように調節されなければならないと考えられる.ATPやEGFは受容体を介してシグナル伝達系を駆動し,細胞の生理機能を調節すると同時に,セカンドメッセンジャー前駆体の生合成をも刺激することが本研究において示された(イノシトールりん酸前駆体生合成調節)。
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