研究概要 |
ベンゼン環を有するカテコールの両端にメタクリル基を付けた閉環重合可能の新しいジメタクリレートモノマー1,2-dimethacryloxy bennzeneを合成し,55℃で24時間,さらに110℃で3時間加熱して封管重合し,収縮率や硬化物の機械的性質をしらべた.その結果,Triethylenglycol dimethacrylateとほぼ同じ13.6%の体積収縮を生じることが明らかになり,この重合条件ではほとんど閉環重合をしないで官能器が架橋反応をし,収縮応力の軽減には効果が少ないが,硬さや弾性率の向上,および耐水性に優れていることがわかった. また裏層材を用いた場合のコンポジットレジン充填の収縮時の応力をしらべた.その結果,化学重合型,光重合型レジンともに0.5〜1.5mmの裏層材が存在すると,収縮応力は約1/2に減少した.これは窩洞壁の接着性が低下したためであることから,コンポジットレジンの窩洞壁による拘束を一部分でも開放することが収縮応力軽減に大きく効果を発揮することがわかった. 以上から,コンポジットレジン収縮の原因は当然モノマーの収縮に起因しているが,歯科充填物としての線収縮はモノマーの体積収縮率とは比例せず,フィラーの存在によって低充填率のとき大きく減少し,高充填率になるにしたがって理論値に近ずき,また試験体の長さによって線収縮率が異なったことから,臨床的な収縮はモノマーの体積収縮のみに支配されないことがわかった. 収縮応力は硬化速度が速い条件で大きくなり,フィラーの充填率が高くなると線収縮率とは反対に大きくなり,窩洞表面の収縮形態が大きく陥没したときは収縮応力が小さくなる傾向であったことから,コンポジットレジン硬化中の流動変形が収縮応力に大きく関与していることを明らかにした.
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