研究概要 |
近年,顎関節内障の概念の発達とともに顎関節内障に対する手術が行われ,再癒着防止のために中間挿入物が必要となってくる.しかし,中間挿入物に関しては,多用されているsiliconeにおいても過剰な組織反応、周囲組織の骨吸収などが報告されてきている.また,自家耳介軟骨が臨床において用いられてきているがこれについても基礎的な研究は行われていない. そこで家兎顎関節および膝関節を用いて,これら中間挿入物の吸収,周囲組織との癒着の有無,炎症の程度などについて,検討を行う目的で次の実験を行った. 1.まず,関節円板における創の治癒経過について検討を行う目的で,比較的大きく,手術操作が容易である家兎膝関節腔を開放し半月板に替え刃メスで切創を加え,治癒経過について経時的に屠殺し,組織標本にて観察した.その結果,周囲滑膜に近いものほど創の治癒は良好であり,経時的に治癒していくことが示された. 2.上記の結果をふまえ,関節円板は周囲滑膜まで含めて切除し,円板摘出後,シリコーンを挿入固定した.肉眼的に顎関節部に腫脹,発赤などの炎症症状は認められず,またシリコーンの排出もみられなかった. 3.シリコーンを挿入した家兎を経時的に屠殺後,顎関節を一塊として切除し,関節腔内の変化を観察した.シリコーンは顎関節内に保持されており,その周囲には薄い強靭な結合組織の被膜が覆っているのが観察された.下顎窩と下顎頭の間に癒着の所見は認められず,開口障害もなかった.しかし下顎頭には骨の変形と思われる像も一部観察された. 4.さらに家兎の耳介軟骨を取り出し,これを凍結乾燥処置を行った後,生理食塩水溶液にて再処理を行って,同様に摘出した関節円板に代えてこの耳介軟骨を挿入した.これを順次,屠殺後顎関節を一塊として摘出し,組織学的,生化学的に分析検討を行っているところである.
|