研究概要 |
1.材料収集 (1)胞状奇胎:期間を通じて長崎大学医学部産婦人科において,2例の胞状奇胎症例があった。1例は13週。子宮全摘にて摘出。もう1例は16週で正常胎児との双胎であった。誘発分娩にて産出したがRNAの収量は極端に低かった。 (2)良性卵巣奇形腫:名古屋市立大学産婦人科鈴森先生の協力を得て2例の良性卵巣奇形腫を得ることができたが,RNAの収量・質とも悪く,解析から除外せざるを得なかった。 (3)正常コントロ-ル胎盤:市内及び北九州・熊本の数ケ所の産院の協力を得て,期間ぎりぎりまで待ったが13週前後の正常胎盤を入手することができなかった。やむなく、8週の絨毛を解析に用いた。 2.ノ-ザンブロットハイブリダイゼ-ションによる解析 13週胞状奇胎及び8週の正常コントロ-ル絨毛より抽出したRNAを用いて,ノ-ザンブロット解析を行った。プロ-ブはマウスでゲノム刷り込みを受けることの証明されているIGF-II及びその受容体cDNAsと,内部コントロ-ルのβ-tubulin cDNAの3種を用いた。 (1)β-tubulinは両組織で同程度に発現されていた。 (2)IGF-IIは正常コントロ-ルに比し,胞状奇胎では極端に強いシグナルが検出され,期待される「2倍」以上の発現であった。これはゲノム刷り込みに加え,週数の違いが反映されていると思われる。 (3)IGF-II受容体は5日のlong exposureで、胞状奇胎では正常コントロ-ルに対応するシグナルを検出することができなかった。 これらの知見はマウスの情報と一致し,本研究システムがヒトにおけるゲノム刷り込みを解析するのに有用であることを示唆する。
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