研究概要 |
普遍定数と考えられる原子の自然放射遷移確率が、プラズマ中で変化を受ける可能性があるか、という近年の疑問に対し、低密度プラズマ(n_e<10^<14>cm^<-3>)を利用してStark効果を受けない形での原子分岐線対強度比測定の実験を行なった。媒体としてのプラズマの影響を最も受けると予想される高励起準位に着目し、遷移確率が理論的に精確に与えられるHe Iのnp^3P-2s^3S,3s^3S(n=6,7,8,9,10)の原子分岐線対を用い、紫外・可視域でのスペクトル線強度比を計測した。通常は観測が困難である上記のような高励起準位からのスペクトル線は、非平衡な再結合状態を実現することによって可能にされている。 スペクトル線強度比測定の結果、定数であるべき分岐線対比の50%にも及ぶ変化が観測された。しかし、この変化は直ちに量子電磁力学効果としての自然放射遷移確率の変化に結びつけられるものではなく、原子分岐線対比に及ぼす原子過程効果としての新しい知見:高励起準位でのlevel mixing効果による見かけ上の遷移確率変化、が議論されるに到っている。 又、複雑な多重項間遷移での原子分岐線対に対して、下準位の構造が同じであれば、分岐線対比は上準位の占有密度分布によらない事が一般的に証明された。
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