研究概要 |
図形・形状処理に必要な幾何演算を行うための方法である4×4行列式法の基礎理論の整備・拡充・発展に関する研究を行った.従来から用いられてきた点の同次座標によって構成されるS形式の行列式に基づく理論をさらに拡張し,向き付き射影空間内の同次図形を対象とした理論を構築した.またS形式の行列式に加えて,面の平面式係数によって構成されるT形式の行列式に基づく理論に拡張した.T形式の行列式による干渉処理の理論は,S形式の行列式による干渉処理の理論と完全に双対の関係にあるものとすることができた.3次元の幾何演算に必要な通常のユークリッド空間の図形に関する処理はこの向き付き射影空間内の図形の一部と考えることができる.以上の理論の整備によって3次元の変換は4次元同次座標空間における線形変換として4×4行列の乗算として行うことができ,幾何テストを4×4行列式の符号判定として行うことができるようになった.これらの技術により4×4行列式法による完全四次元処理の可能性をより広げることができた. また拡張された4×4行列式法に基づいて,従来は特別に扱われていた有理多項式曲線・曲面の形状処理を通常多項式曲線・曲面と同様に凸閉包性を利用して行う一般的な方法の基礎を示した. また完全四次元処理に基づいて除算をまったく必要としない,多倍長整数による無誤差演算によって幾何演算を行う信頼性の高いソリッドモデラを試作した.多倍長整数による幾何演算をできるだけ高速に行うために,ビット単位の適応的な演算を行う方法について調べた.その結果,幾何演算を行うために必要な演算ビット数に関する理論を得た. 以上の研究によって4×4行列式法に基づく完全四次元処理方式による図形・形状処理の新たな可能性を示し,その有用性を示すことができた.
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