研究概要 |
メタノール燃料は自動車ガソリン等の代替燃料として,また環境調和型エネルギーとして注目されている。メタノール燃料の燃焼排気ガス組成と生成割合,特にホルムアルデヒド等の微量成分の生成挙動については必ずしも明らかでなく,また燃焼排気ガス中の気相ラジカルの生成についてはほとんど知られていない。 本研究では燃焼反応実験装置KRS-RG6097型(モデル装置)と実用エンジンとして電子制御式燃料噴射装置仕様のトヨタ製コロナE-ST150を用いて,メタノールを種々の条件下で燃焼させて得られる結果と考察から,燃焼排気ガスの特性と生成機構を解明し,有害成分の発生低減化の方法に関する知見を得るための一助とする。 初年度は実用エンジンを用いて,空燃比,回転数,負荷の変化と排気ガス組成及び濃度,排出ガス温度との関係を測定した。その結果,実走行(5〜20PS)でメタノールを燃焼させている場合は,エンジンの暖機が確実に完了し,排気管温度が十分に高ければホルムアルデヒド及び未燃メタノールはほとんど排出されない。負荷が小さく,希薄空燃比運転では排気管温度が低くなるとホルムアルデヒドの排出が増加する。また気相ラジカルの生成量も排出ガス温度と相関を有している。排気ガス中の気相ラジカルについては,アルコキシラジカル,アルキルラジカルと考えられるものが生成していることがわかった。 本年度はモデル装置を用いて,炉温の変化及び空燃比(理論空燃比燃焼Φ=1)の変化と炉温の影響を検討した。その結果,メタノールの発火燃焼が470℃付近で起こり,ホルムアルデヒドの濃度が最大を示し,かつ気相ラジカルの存在が認められ,上述と同種のラジカルの存在を確認した。これらのことから,メタノールの燃焼反応経路はアルコキシラジカル(RO)を経由して進行する反応機構であることが結論された。
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