研究概要 |
分裂酵母ゲノムより Cキナーゼ(Ca^<++>,リン脂質依存性プロテインキナーゼ)の相同遺伝子を2つ(PCK1^+とPCK2^+)PCR法により単離した。塩基配列決定の結果 2つはともにシスティンに富むCキナーゼ族に特徴的な共通配列をもつことがわかった,しかし興味深いことにカルシウム相互作用領域はもっていなかった。このことからPCK1とPCK2はともにnPKC族(novel PKC)に属すると予想される。これは下等真核生物からクローニングされたnPKCの最初の例である。 遺伝子破壊の結果 PKC1^+とPCK2^+は重複しつつ増殖必須機能を有することがわかった。さらに,PCK2遺伝子のみを欠く細胞では,細胞の形態に顕著な異常がみられ、分裂酵母ではPKC1,PKC2遺伝子は細胞の成長および形態を決定,維持する情報伝達系に作用することが示唆された。PCK2^+遺伝子を誘導可能なプロモーター下で大量発現させると,やはり細胞形態に異常を呈し,致死となった。このことからも分裂酵母PKC1とPCK2が細胞形態維持に重要な機能をもつことは示持された。 ホニュウ類Cキナーゼは大きな遺伝子族を形成しており,少なくとも8種の亜種遺伝子(PKCγ,β,γ,J,ε-)がこれまでに分離されている。果たして高等生物由来のCキナーゼが分裂酵母のPCK1 PCK2の機能を代替できるが解析に着手した。それぞれの亜種を分裂酵母のプロモーター下に連結し、分裂酵母PKC1,PKC2変量細胞に導入した(英国,Dr.Pauberとの共同研究)。これまでのところ,ホニュウ類Cキナーゼが分裂酵母で機能互換性があるという積極的な結果は得られていない。現在引き続き解析中である。
|