研究概要 |
第2年度において松村は国産概念の普遍的意味と歴史的限定性を明らかにし、それを資本主義経済の発展段階との関連性において捉えた。すなわち,自国資本が自国労働者を自国の原材料と技術を用いて自国領土内において生産する様式を「純粋国産」と措定する。この基本概念に基づいてここから乖離してゆく生産の転態過程を生産地・所有権・技術開発の3方向から考察してその類型化を明確にした。これらは,従来の国民経済・国際経済・世界経済という理論範疇と共通性とともに異質性をも有する。なぜなら,後者の概念は封鎖的な国民経済を前提した上での国際化・世界化であるのに対して,前者は生産要素の国際的移動によって展開されたボーダーレス・エコノミーだからである。それゆえ,原産地国とローカルコンテントとの理論的計量的分析が重要なことを明確に指摘した。 国産品比率の1つの考え方として,産業関連表の列に着目して,生産物に含まれる原材料および生産要素の出身地で国産品比率を定義することができる。これは直接に必要な原材料投入を問題にしているので直接技術基準と呼ぶことにする。しかしながら,この定義では原材料が投入時には国産品になっているといっても,その生産時には原材料としての輸入品が必要であるということを考慮していない。そこで,この定義に産業連関分析の手法を応用すれば,投入財の生産に必要な輸入品の投入量をも含めて計算することができる。この定義は間接的な輸入財投入も考慮しているので,間接技術基準と呼べるが,言い換れば,生産物の価値を海外に漏れる輸入原料と国内に残る付加価値とに分割することと同じであるので,付加価値基準とよぶことにする。 この2つの基準で,1985年時点でのG5諸国の輸入比率を試算してみた。機械産業に限れば,直接技術基準ではわが国の輸入比率はきわめて低いが,付加価値基準ではアメリカとほぼ同様の水準になる。これはわが国でのエネルギー投入のほとんどが輸入されていることによっている。一方欧州各国の輸入比率は日米両国に比較して際だって高く,欧州各国は原材料を相互に依存していることがわかる。また,わが国の機械産業群の輸入比率を1960年から1985年までの時系列で計算した結果,ほぼ10%程度で安定していることがわかった。 以上の結果について93年度「国際経済学会」全国大会(於大阪市立大学)において報告し別途記述のように共同論文として発表した。
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