研究概要 |
次世代の太陽系天体探査機の果たすべき多くの観測項目の中で惑星系の起源と進化の観点から重要と考えられるものの一つは,ダストなどの宇宙固体物質の元素ないしは化学組成をin situに,あるいは持ち帰られたサンプルについて決定することであり,本研究ではそのひとつの手法として,飛行時間型質量分析器を開発するのが主な目的である.この目的のために年度内におもにつぎの二つの側面からの研究が行われた.(1)ダスト粒子の組成分折のための飛行時間型質量分析器の製作とテスト:分析器は飛来するダストを衝突させるタングステンターゲットメッシュ,そこででたプラズマを加速するための電界をかけたステンレスメッシュ,電界のない空間中を自由飛行させるドリフト部分,最終的にイオンを検出するマイクロチャネルプレート部から成っている。ドリフト部本体は長さを20cmと極端に短くし,将来の探査機搭載用に備えて軽量化したものとした.製作後小型ダスト加速器につながるチェンバー内に設置し真空テストを行った. 現在1μm程度のサイズの微粒子を約2km/sで飛ばして,分析器に当て,そのプラズマを検出するとともにイオンの種類の違いによる出力波形を観測した.現在分解能を向上させるために実験条件を変えて実験を行っている.(2)固体に高速度固体粒子が衝突したときに出すプラズマや細かい破片の性質などの衝突時の物理過程程を調べておくことが必要である.そのためマクロサイズの固体を現有の二段式軽ガス銃で固体標的に衝突させる実験を行い,プラズマ,微小破片の速度を決定した.
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