研究課題
特別研究員奨励費
我々は、高効率の遺伝子送達・発現を達成する、結晶成長を制御できるアパタイトナノ粒子による人工坦体を開発した。マグネシウムイオンまたは炭酸イオンをアパタイト粒子に含有させることにより、ナノサイズの粒子を生成させ、なおかつその粒子に酸性環境下における高い溶解性を付与した。これにより、細胞によるDNAの取り込みが向上し、そして細胞内移行後におけるDNAのアパタイト粒子からの放出、さらにエンドソームからの放出が促進され、結果として現存する手法の5-100倍もの導入遺伝子発現を達成した。さらに、炭酸アパタイトナノ結晶の表面に細胞認識分子を物理的に吸着させることにより、細胞特異的な遺伝子送達・発現システムを構築した。アシアロ糖タンパク質レセプターを介して肝実質細胞由来の細胞株による取り込みを促進させる分子であるアシアロフェツインとアルブミンをモデルとして用い、DNA/ナノ粒子複合体をコートすることに成功した。アルブミンは、粒子と細胞表面との非特異的な相互作用を抑制させるために用いたものである。この二種類の表面特性を持つ複合体を用いることで、DNAの取り込みと発現を著しく向上させることに成功した。また我々は、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質が硬組織(骨や歯)中の無機成分に対してもともと親和性が高いことに着目し、DNA/アパタイトにI型コラーゲンまたはフィブロネクチンとのナノハイブリッドを作製することに成功した。この複合体はインテグリンレセプターを特異的に認識して迅速に細胞内に進入し、哺乳細胞において非常に高い遺伝子発現を示した。以上の通り、この新規遺伝子デリバリー技術は遺伝子の発現効率、細胞認識性、生分解性、複合体調製の簡便性の点で、基礎研究の分野でも臨床の現場でも、現在ある他の手法よりも非常に有望な技術である。
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