研究概要 |
本研究の目的はヘリコバクタピロリ菌の細胞毒素VacAが炎症発現因子、サイトカイン(IL-1β,IL-6,IL-8およびTNF-α)の遊離及び胃上皮細胞の生育に影響を及ぼすか否かを明らかにすること、加えて、NaclがこれらのVacA誘導能を変化させるか否かについて研究することであった。 方法:空胞活性は、VacA毒素で処理された人AGS細胞の空胞内への中性赤の取り込み量の計算により測定された。AGS細胞の生存能の評価は直接細胞数を数えた。細胞の培養はAGS細胞を24穴プレートに5×10^4個を撒布し、37℃一晩インキュベートした。その上清を捨て、AGS細胞は食塩単独またはVacAと食塩一緒に100ml/LのFBSを加えたF-12培養基の中で成育させた。 HピロリVacAの影響およびAGS細胞の細胞炎症サイトカイン産生に及ぼすNaclの影響を検討するのにELISAとRT-PCR法を用いた。 スナネズミからの胃組織の免疫組織学的染色はVacAにより誘導された細胞炎症性サイトカイン産生の確認とVacA誘導反応へのNaclの影響について確認するために用いられた。 結果はVacA毒素の添加は単独でAGS細胞生存能を減少されることが明らかとなった。 VacA単独群はTNF-α、IL-8およびIL-1βの発現を引き起こしたが、Nacl単独ではTNF-αおよびIL-1βの発現がみられた。VacAおよびNacl両者の存在下ではm-RNAレベルの変化がより複合的に出現した。TNF-αに関して、その発現はNaclの量に依存していた。IL-1,IL-6およびTNF-αの免疫組織学的染色陽性は、正常食、高食塩食の両方においてヘリコバクタピロリ感染ネズミの胃組織に認められた。(Food and Chemical Toxicology;43,1773-1780,2005,World Gastroenterol;12(14),2174-2180,2006) 以上のことより食塩そのものもIL-1βおよびTNF-αの発現を引き起こし、更に相乗的にTNF-αの発現を促すことが明らかとなった。
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