研究概要 |
地中海東部一帯では3つのプレートが会合しており,地震活動が極めて活発な地域に当たる.地中海の北部一帯に比べるとエジプト国内の地震活動度は高いとはいえないが,紅海,シナイ半島近傍及びナイル川流域には規模の大きな地震が発生している.エジプトの国土は日本の約2.3倍の面積があるが大部分は砂漠が占め,主な居住区はナイル川流域の3パーセントに過ぎない.そのため人口の超過密な地域が存在する.またこの地には人類全体の遺産とも言うべき古代エジプトの遺跡が数多く存在する.本研究の目的は,このような地域の地震災害軽減をめざして,ナイル川流域の大地震を想定した強震動予測を行うことである.平成18年度本研究の最終年度であり,特別研究員期間終了までの7ヶ月半で以下の項目を実施した. (1)地震動シミュレーションのため,1992年カイロ地震の震源とカイロ全域を含む広域にわたる領域について3次元不均質構造モデルを構築した.これは,地形,地球物理学的及び地質学的データから推定された表層基盤面分布,モホ面の深度分布等の広域データ及びカイロ周辺のより詳しい表層地盤構造の情報を基に作成した3次元不規則成層構造(層内均質)モデルである. (2)それを基に1992年カイロ地震時のカイロ周辺の長周期地震動(地動速度)を3次元数値シミュレーション手法(spectral element method)を用いて求めた.その結果を基に,1992年カイロ地震の震源断層の延長上に推定されている伏在断層で想定される地震における地震動に性状について考察した (3)また,収集した表層地盤情報を基にナイル流域のカイロ南西域における液状化の可能性について検討した.
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