研究概要 |
今年度の成果を以下に示す。 1.高精度狭帯域相関処理方法の研究: SELENEの2つの子衛星を電波望遠鏡の同一ビームで観測する相対VLBIにおいて2πの不確定の除去法を新しく提案し,全観測時間帯において位相を接続する多周波相対VLBIの実現方法を研究した。本研究により,同一ビーム観測の場合,相関位相揺らぎの要因である受信機の不安定性,電離層,大気,送受信アンテナの位相特性の影響と補正方法を明らかにし、位相遅滞時間の推定精度は数ピコ秒可能であり,2つの子衛星の相対位置を数10cmの精度で決定できることが分かった。本研究成果に関する論文は信学論とJASR2006論文誌に掲載、採録された(論文1、2)。 2.同一ビームVLBI観測法の研究: 受診アンテナ主ビーム内の位相特性を精密に測定し、最小2乗法で求めた2次近似曲面で補正し、主ビーム内の位相変化は1度以内に抑えることができ、同一ビームVLBI観測技術の有効性を確立した。この研究成果はIEEE論文誌に掲載された(論文3)。 3.大気位相揺らぎの研究: VLBIの精度に大きな影響を与える大気位相揺らぎの統計的性質、気象条件との関係を解明し、相対VLBIとGPSを用いた補正方法の検討と補正ソフトの開発を行い、相関位相への影響を1度以下に抑えることができた。これらの研究成果はIEEE論文誌、JASR 2006論文誌に採録された(論文2,4) 4.国際国内VLBI観測装置の整備と実験 水沢、入来、石垣島、小笠原のVERA4局と上海、ウルムチ、Hobartに観測装置を設置し、 VLBI観測実験により、開発した観測システム性能を有することを確認した。また、ウルムチXバンド受信機の開発をほぼ完成した。さらに、ESAの月探査機Smart-1のVLBI観測を行い、得た位相遅延時間とESAからもらったドプラーデータを併用することで、 VLBIとドプラーの軌道決定への有効性を確実した。
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