研究概要 |
大腸菌の低温馴化においては、RNAシャペロンとして機能する低温ショックタンパク質(CSPs)が蓄積する。植物の低温ショックドメイン(cold shock domain ; CSD)タンパク質は細菌のCSPsと高度に保存されたCSDをもち、植物の低温馴化に必要であると考えられている。我々は植物の低温ショックタンパク質の機能解明を目的として、シロイヌナズナの4つのCSDタンパク質(AtCSP1〜AtCSP4)のうち、AtCSP3についての機能解析を行った。まず、組換えAtCSP3を用いて、RNAシャペロン活性に必要な核酸結合性を検討した。その結果、AtCSP3は一本鎖DNA,二本鎖DNA,mRNAに対して結合活性を示した。また,RT-PCRによりストレス応答性発現を検討したところ,AtCSP3は低温処理(4℃)により誘導されることが分かった。Promoter-GUS融合遺伝子の発現解析により、AtCSP3は葯、幼苗の成長点および根の先端組織で特異的に発現することが明らかとなった。Promoter-GFP融合遺伝子の発現解析により、AtCSP3は細胞内の小胞体で発現しており、RNA、タンパク質の発現制御に関連することが示唆された。AtCSP3ノックアウト変異株では、低温馴化処理にかかわらず、野生株と比較して耐凍性が低下していた。一方、AtCSP3過剰発現体では、野生株と比較して耐凍性が向上していた。これらの結果から、AtCSP3は低温馴化過程で誘導され、耐凍性獲得に必要であることが明らかとなった。
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