研究概要 |
1.CdCl_2添加により調製したCd汚染土壌をカラムに充填して降雨実験を行い,Cd脱離・移動およびコロイド粒子可動化に対する溶液濃度と水移動の影響を検討した.実験では蒸留水または5mM CaCl_2を降雨強度7mm h^<-1>で間欠的に浸入させ,カラム流出液の濁度,Cd濃度およびイオン組成を測定した.流出液のコロイド濃度はイオン濃度が低下すると急上昇したのに対し,5mM CaCl_2の浸入により無視できるほど小さくなった.また,降雨再開直後の流出液では,沈積した分散粒子の再可動化によるコロイド濃度の増加が観察された.溶存態CdはCa^<2+>ときわめて類似した濃度変化を示し,5mM CaCl_2を浸入させると,溶存態でのCd移動が顕著に促進される一方,コロイド吸着態での移動は完全に抑制された.蒸留水を浸入させると,流出液中の全Cd濃度は低下するものの,Cd移動に対するコロイド吸着態Cdの寄与は30〜80%に及んだ. 2.Cd汚染土壌充填層と亀裂の存在する不撹乱下層土からなる成層カラムを用いて同様の降雨実験を行った.成層カラムでは充填層においても水移動が一次元的に均一ではなく,このため,流出液のコロイド,溶存態Cdおよび陽イオン濃度の変化は緩慢であり,降雨再開直後に濃度が増加するなどの現象がみられた.コロイド吸着態Cd濃度は一層カラムに比べて低く,充填作土-下層土境界面でコロイド粒子の沈積・捕捉が生じたことが示唆された.このように,下層土に亀裂の発達した土壌では,亀裂へと向かう水移動が一次元的でないことが,浸透水のイオン組成や分散粒子の沈積・再可動化を通じて溶存態およびコロイド吸着態でのCd移動に影響する.また,石灰施用土壌では溶存態でのCd移動が顕著に減少しうるが,コロイド輸送にはめだった影響が見られず,コロイド吸着態が主要な移動形態となりうることが明らかになった。
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