研究課題
特別研究員奨励費
薬物をがん細胞へ選択的に送達するDrug Delivery System(DDS)の開発が精力的に行われている。DDS用微粒子キャリアーとしてはがん細胞へ特異的に吸着する表面や官能基を有するエマルジョンやカプセル粒子が用いられるが、これらの性能テストは主にラットやマウス等の生体に投与することによるマクロな収支バランスと、解剖後の各組織への吸収・蓄積率等により評価されている。こうした組織レベルでの評価は種々の知見を与えてきたが、さらに高効率の標的指向性を有するキャリアーの設計のためには、細胞レベルでの微視的な粒子の吸着、取り込み現象の理解が必須であり、従来の組織レベルでの評価法のみでは今後、DDSの飛躍的発展を図ることは難しい。そこで本研究では、(1)原子間力顕微鏡(AFM)を用いて細胞表面の局所特性が種々の培養条件下でどのように変化するかを検討した、(2)DDSに用いられる粒子をAFMのカンチレバー先端に取り付け、培養したがん細胞表面間との相互作用を種々の条件下でin-situ測定し、粒子の表面物性、接触時間、細胞培養条件等が、粒子の細胞の付着力(親和性)、粒子の吸着・吸収や取り込みにどのような影響を表すかを分子オーダで明らかにした。用いた細胞は、がん細胞Melanoma、Caco-2の他、正常細胞L929、肺モデル細胞A549である。検討内容、結果は下記の通りである。(1)付着性の弱い細胞の形を損傷無くAFM像にする方法の開発(下記発表論文1にで公表)(2)AFMの操作条件が粒子表面・細胞表面の付着力に与える影響の検討(下記発表論文2にで公表)(3)粒子表面特性のうち、表面荷電、表面親・疎水性が細胞表面との親和性に及ぼす影響の検討(下記発表論文3にで公表)(4)細胞の培養密度が粒子表面・細胞表面の親和性に及ぼす影響の検討(下記発表論文4にで公表)(5)金表面へのシリカ粒子の付着に関する研究。これはSurface Enhanced Raman Scattering(SERS)が将来、細胞表面特性の評価に使えるかどうかを視野に置いた基礎研究。(下記発表論文5にで公表)(6)粒子表面を分子量の異なる高分子PEGを組み合わせて修飾することによる細胞表面との親和性の検討(結果は現在論文投稿中)本研究で得られた基礎的情報は、今後の高性能DDS用キャリアーの粒子設計に資すると考えられる。
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