研究課題
特別研究員奨励費
最近、ボロンドープのダイヤモンドが超伝導になるということで注目を集めている。2004年に報告された転移温度は4Kであったが、現在はオンセットで11Kが広告され超伝導発現の機構解明とともにより高温で超伝導転移を起こす物質合成研究が進められている。我々は、CVD法でボロンドープの単結晶ダイヤモンド薄膜を作成している早稲田大学川原田研究室から試料提供を受け放射光非弾性散乱法によって格子振動の観測を行った。中性子非弾性散乱が適用できるような大きさの単結晶作成は不可能であり放射光X線が唯一、格子振動をエネルギー、運動量空間で観測できるプローブである。測定した試料の超伝導転移温度は、オンセットで6.4Kであった。注目した格子振動は、理論計算からの予測、また超伝導転移温度が高いということを考慮して、縦波光学振動モードでエネルギーが最も高い160meVの格子振動の分散関係を測定した。この結果、<100>,<111>の両方向においてゾーンセンターで約10meVのソフト化し、ゾーン境界に向かってそれがなくなっていくことが観測された。この結果は、偽結晶近似による第一原理計算での理論計算と定性的な一致を示しており、超伝導発現に最高エネルギーの縦波光学振動モードが強く寄与していることが示唆された。今後は、超伝導転移温度の異なるいくつかの試料による同種の実験を行い、観測された格子振動のソフト化の程度と超伝導転移温度との相関、格子振動の寿命(非弾性X線散乱ピークの幅)の定量的な議論を行うことによりダイヤモンド超伝導の発現機構解明を進めていく。
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